噛んで、DESIRE



……吾妻くんの周りに、人がいっぱいいる。

慣れない光景すぎて衝撃を受けていると、その中のひとりが眠たそうにしている吾妻くんに声をかけた。


「吾妻! 俺と班一緒にならねえ?」


その瞳は真剣で、どうやら本気のお誘いらしい。

彼は確か、澪子が声をかけようとしていたうちのひとりの、三原くんだ。


クラスのムードメーカー的存在で、いつも教室の真ん中にいるような明るい男の子。


「ずっと俺、吾妻と話したかったんだけど勇気出なくてさ! この機会に仲良くしよーぜ!」


三原くんの言う勇気が出ないというのは、吾妻くんが普段、話しかけるなオーラ的なものを放っているせいだろう。

根も葉もない噂もたくさん流れている吾妻くんは、確かにキケン人物だけど、実はそこまで怖がられていたわけじゃないのかもしれない。


そう思ったら、なんだかすごく嬉しくて、思わず頬が緩んでしまう。



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