噛んで、DESIRE


……どうしよう、嬉しい。

吾妻くんが、人気者になっている。


たくさんの噂じゃなくて、吾妻くんそのものを見てくれる人が増えたのだ。

それはきっと、初めに話しかけた三原くんのおかげ。


わたしがずっと見ているのを気になったのか、澪子も隣を見て、驚いたように言った。


「吾妻くんって、思ったより笑うんだね。結構意外かも」

「う、ん……そうだね」


本当は、もっとたくさん笑うんだよ。

そう言いたくなるのをぐっと堪え、心の内がバレないように控えめにうなずいた。



「でも吾妻くんに三原取られたか〜。じゃあ須藤に聞こうかな」


どうやら吾妻くんと同じ班になるという選択肢は、澪子のなかでなさそうだ。

彼女は心配性だから、まだまだキケンな彼のことを疑っているのだろう。


いつか本当の彼を見てくれたらいいなと思いながら、さらに聞き耳を立てる。


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