噛んで、DESIRE
うっかりなんていう次元の話じゃない。
凶暴な獣、否、吾妻くん。
でも正直、噛み跡くらい付けたって構わない。
どうせなら、わたしだって噛んでみたいと思ってしまっているのだから……相当重症。
彼の瞳に捕らわれたあのときから、何かが、すべてが狂っている気がする。
それが悪いほうばかりじゃないことを、意味もなく願っている。
「あ、いま噛まれてもいいとか思っちゃった?」
冗談のように軽快に笑った吾妻くんに、わたしは真に受けてうなずいてしまう。
「……う、ん」
わたしは彼の誘惑に弱い。
そして、彼の美麗な雰囲気に、めっぽう弱い。
自分の言動が恥ずかしくて俯く。
彼に赤くなっている顔を見られないようにしたのに、突然グッと後頭部を押さえられて、鼻がぶつかりそうなほど近い距離に吾妻くんのお顔が現れた。