噛んで、DESIRE



「……え」


わたしが、……原因?

このまえ素直になれずに、煙草の匂いが嫌って言ったことを覚えていたの?


びっくりしすぎて、固まってしまう。

だって、そんなの期待しちゃう。

彼の世界に、わたしが少しでも入っているんじゃないかって。


数秒続いた沈黙に耐えられなくなったのか、彼はふいっと顔を逸らして呟いた。


「同居人が嫌がってたら、吸うにも吸えねえってコトだよ」

「……そ、そうです、か」


「結構禁煙って辛いんだよ。だから、吸いたくなったら杏莉ちゃん噛むって決めた」

「……は、はい?」


めちゃくちゃなことを言っていることを自覚していないのか、吾妻くんは平然としている。

でもこれが、彼の通常運転。


それよりもわたしの言葉ひとつを気にかけてくれた事実が嬉しくて仕方ない。



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