噛んで、DESIRE



吾妻くんを知れば知るほど夢中になっていく。

だって、美しいものは人を支配するのだから。


だけれど、その美しさには棘が潜んでいる。

彼には、恐ろしいほどの毒が回っている。


そんな吾妻くんに噛まれたわたしは、きっと彼にほだされている。

それでいい、だから。


彼の世界に、少しでも足を踏み入れたいと思ってしまったのだ。


「……吾妻くん」

「どーしたの、杏莉ちゃん」


「気が向いたら……禁煙、付き合ってあげます」




素直じゃないわたしの言葉に、彼はゆっくりと口角を上げて微笑んだ。


「頼りにしてるよ」





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