噛んで、DESIRE
夢の国が似合わない
☽
「同じ家に住んでるんだし、いっしょに行こ」
吾妻くんには危機感が足りない。
これは彼と同居してみて、毎日のように身に染みて感じていることだ。
今日もまた、吾妻くんは朝から通常運転。
危機感のカケラもない発言に、小さくため息をつきながら反論した。
「……クラスの人に怪しまれたらどうするんですか」
「そんときはそんとき。誤魔化しなんてどうとでもなるじゃん」
「その考えがいけないんです!」
いまは、遠足もとい校外学習の日の朝。
いまからテーマパークへと向かうわたしたちは、クラスメイトというより同居人というほうが強い。
わたしが急いで支度をしていると、吾妻くんは暇そうに声をかけてくる。
「たまたま駅で会ったって言えばいいだけじゃん?」