噛んで、DESIRE


この歳でテーマパーク来たことないと言っても、いっさい驚かないところが吾妻くんらしい。

だから、彼のそばにいるのは息がしやすい。


気を遣わないし、……緊張はするけれど、底なしの優しさが垣間見えるから離れられない。


「え、四宮さんこういうところ来たことないの?」


だけど、みんながみんな吾妻くんのように驚かない心を持ち合わせているわけではなく。


……そりゃあ、驚くよね。

びっくりしたように声を上げた三原くんに、こくりとうなずいた。


「家族で出かけるっていうことが……小さい頃から、ほとんどなくて」

「そうだったんだ……。ご両親忙しいとか?」


「う、……ん。そんな感じかな」

「そっか! じゃあ、今日はせっかく始めて来たんだから、たくさん楽しもうぜ!」



< 153 / 320 >

この作品をシェア

pagetop