噛んで、DESIRE
三原くんも、すごく優しかった。
歯切れのわるいわたしを責めるわけでもなく、屈託のない笑顔を向けてくれる。
そんな反応ができるのは簡単ではないことを、わたしはちゃんとわかっている。
心の中ですごくすごく感謝しながら、にこっと笑ってうなずいた。
「ジェットコースター乗ろう!」
「杏莉、無理しちゃだめだよ? 絶叫系は結構、神経削がれるからね?」
「神経削がれ……」
「ほら、八島は四宮さん脅さない! 楽しいからぜったい大丈夫!」
ちょっぴり過保護だけど大好きな澪子と、優しくてリーダーシップのある三原くんと、マイペースで眠そうな吾妻くん。
まだ始まったばかりなのに、すでに楽しくて頬が緩んでしまう。
そんなわたしを吾妻くんが口角を上げて見ていたなんて知るはずもなく、アトラクションの乗り場へと軽い足取りで向かった。