噛んで、DESIRE


わたしも自分で驚いている。

テーマパークという場所に足を踏み入れたのも初めてだから、いままでジェットコースターという乗り物など空想のものと同じだったのだ。


まったくイメージが湧かなかったけれど、いざ乗ってみると浮遊感と開放感が楽しくて、見事にハマってしまった。


こんなに楽しい乗り物だったんだ……!と嬉しくなって、何度も列に並んでいたら、ついに澪子と三原くんがバテてしまったのである。


「ちょ、俺らは一旦休憩するわ……」

「そうね……。わたしもこれ以上動くのは厳しいかも」


青ざめている三原くんと澪子が近くのベンチに寄りかかって言うものだから、心配になりながらも慌てて提案する。



「えっ、じゃあ皆んなで休憩しよう?」


だって、せっかく同じ班のメンバーなんだから、全員が楽しくないと意味がない。

そう思って本心から言ったのに、澪子に厳しい顔で首を横に振られてしまう。


「杏莉は初めてのテーマパークを楽しむべき! わたしと三原のことは良いから、吾妻と回ってきな」

「でも……っ」


以前は吾妻くんと同じ班になるのを渋っていた澪子がそんなことを言ってくれるのは、きっとわたしのためにそれが最善だと思ってくれたのだろう。

その気遣いがわかって、嬉しくて、でも素直にうなずけない。


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