噛んで、DESIRE
複雑な表情を浮かべているわたしに、さらに三原くんが「そうだそうだ!」とでも言うように応戦してくる。
「四宮さん、行ってきなよ! 俺は八島がナンパされないように見張っとくからさ」
「はい? わたしは、三原がぐったりしてるから仕方なしに付き合ってあげてるんだよ」
「ちげえし! 八島のほうが顔青ざめてるし!」
「そのせりふ、鏡見てきてから言ってよ」
……うん、このふたりを置いていっても大丈夫そうだ。
何も心配はいらなかったのかもしれない。
そう思いながら後ろに立っていた吾妻くんを見上げると、彼はニコッと微笑んで口を開いた。
「じゃあ杏莉ちゃんとのデート楽しんでくるね」
その言葉に、澪子の額に青筋が浮かんだのを察し、慌てて彼の背中を押して回れ右をする。
急いでこの場から離れなければ……!
もう、吾妻くんは地雷を踏みすぎだよ……。
困りながらも、吾妻くんとふたりで並んで歩く。
いつもと変わらないはずなのに、夢の国にいるせいか、いつもより彼の金髪が輝いているように見えた。