噛んで、DESIRE
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「ジェットコースター飽きた」
その後もまた2回乗り、さすがに吾妻くんが唇を尖らせてそう言った。
並んでいるあいだも、ほかのクラスメイトが不思議そうにわたしたちを眺めていたけれど、絶叫系でバテてしまうのはよくあるらしく、だれも追及しては来なかった。
わたしたちは、傍から見ればすごく凸凹なふたりなのだろう。
普通に暮らしていたら、交わることのない人。
それなのに、いまは当然のように並んで隣を歩いているのだから、人生何があるかわからない。
「わたしも、さすがにちょっと……飽きました」
「だよね。なんか違うの行こ」
「じゃあ……メリーゴーランドとかですかね」
「俺は眩しくて乗れねえわ」
はは、と笑った吾妻くんがメリーゴーランドを乗っているところを想像する。
……ぜったい、浮くよね。
あまりにもミスマッチで、面白くて、思わず小さく吹き出してしまうと、吾妻くんがそんなわたしをジト目で睨んだ。
「なに、杏莉ちゃん笑った?」
「笑ってないです」
「ん、無理あるよね? ぜったい乗らねーから」