噛んで、DESIRE
意固地になってしまった吾妻くんをこれ以上誘うことは困難だと諦め、パンフレットを広げて探してみる。
どれがいいかな……と眺めていると、後ろから覗き込んできた彼が、わたしの耳元で囁いた。
「決まり、お化け屋敷ね」
何事もなさそうに、平然と。
ホラー系が苦手なわたしを知っているのか否か、あたかも決定事項のようにパンフレットの地図に指を差した。
「……っ、え」
「はい、行くよ」
「ちょっと、待ってください!」
さっさと歩いていく吾妻くんの腕を掴むと、彼はつまらなさそうに振り返ってくる。
わたしが掴んだ右腕をじっと眺めている彼の視線に気付き、急いでパッと手を離す。
自分から彼に触れてしまったのは初めてかもしれない。
そう思ったら突然恥ずかしくなってきて、小さな声で反論する。