噛んで、DESIRE
……お坊ちゃん、旦那さま、世間体、脱獄。
ぜんぶ、この場所に似合わない言葉たち。
突然、夢の国から切り離されたような気分に陥る。
だって、会話の意味がわからない。
重苦しい空気が流れ、どうしようもなく動悸が激しくなる。
……吾妻くんが、笑っていない。
あまりにも表情を消した彼は、キケンで、触れられないくらい恐ろしかった。
事情はぜんぜんわからない。
だけど、彼は実家に帰っていない時点で、何らかの事情を抱えていたのは明らかだった。
それはもちろん、わたしも同じで。
だからこそわたしたちは……理由も聞かず、ただ近くにいる生活でお互いの寂しさを埋め合わせていたのかもしれないと思った。