噛んで、DESIRE
ちょいちょいと手で招かれ、ソファの上にいる吾妻くんの隣に控えめに座る。
ふわりと香る彼の匂いは、いつからかわたしと同じになっている。
それにいちいちドキドキしているわたしは、吾妻くんの言うように純情なのかもしれない。
彼は平然とわたしの濡れた髪に触れ、肩にかかっているタオルで拭いてくれたあと、ほい、と手を出してきた。
……この手は、なに?
意図がわからず彼の大きな手をじっと眺めていると、吾妻くんは苦笑しながら言った。
「ほら、ドライヤー持ってきて」
「え、どうしてですか?」
「髪、乾かしたげる」
まさか吾妻くんから出たセリフと思えず、無意識に彼を見ようと振り返ってしまう。
だけど彼の手が邪魔をしてそうはさせてくれず、急ぐように促される。
「早くしないと、乾かしてあげないよ?」
「……っ、急ぎます」