噛んで、DESIRE
「確かに似合わないですよね! 自分でもわかってますよ」
「いや、そういうわけじゃないんだけど」
「……違うんですか」
じゃあ吾妻くんは、何を渋っているのだ。
後ろの席でこそこそ話しているわたしと吾妻くんは、騒がしい教室の中で注目されることはなく、安心して喋ることが出来る。
首を傾げたわたしに、吾妻くんは不満そうに言った。
「杏莉ちゃんのご主人様は俺じゃん?」
「…………違いますけど」
平然と何を言ってるんだこの人は。
「世の中にはツンとしてて愛想のない女のコのメイド姿にグッとくる、俺みたいな物好き男がいるんだよね」
「は、はあ……」
「杏莉ちゃんはそんな奴に絡まれたらどーすんの? どうせ泣きそーーな顔して黙ってんでしょ?」
「えっと……」
「そんなの見たくもないってハナシ。まああとは、学校でうっかり脱がしちゃうかもしれ……」
「いますぐ黙りましょう、吾妻くん」