噛んで、DESIRE


公共の場です!と睨めば、吾妻くんは唇を尖らせて黙った。


独占欲なのかわからない発言に振り回されるのは嫌で、いまのは聞かなかったことにする。

それに吾妻くんは気分屋だから、なんとなくでしか話してないと思う。



「いつか俺以外の誰かに捕まる前に、本格的に噛み跡つけようか考えないとね?」

「……何の話ですか」


「そしたら杏莉ちゃん、俺のことでいっぱいになるじゃん?」



そんなことしなくても、いまも吾妻くんのことで頭がいっぱいだ。

彼と暮らしはじめたあの日から、毒牙にかかってしまった。


逃げようと思えば、逃げられるのかもしれない。

だけど捕らわれているのも悪くないと思ってしまっているのだから、お互いさまだ。



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