噛んで、DESIRE



投げやりにそう言ったかと思えば、吾妻くんはすぐに首を捻って訂正した。


「というか、叔父さんには迷惑かけてるから。帰るのも申し訳ないみたいな感じ?」

「申し訳ない……」


吾妻くんがご両親といっしょに住んでいないことは明らかだった。

それはわたしも同じで、だからわざと、叔父さんと住んでいる理由は聞かなかった。


そっか、と言うようにうなずけば、吾妻くんはわたしを見つめて口を開く。



「でさ、その叔父さんは、今日に限って出張で明後日まで帰ってこねーの」

「それは、大変ですね……?」


「そう、大変。俺、野宿とかぜったい嫌なんだけど」

「わたしも、野宿はさすがに……」


「でしょ。てことで、杏莉ちゃん。今夜泊めてくんない?」



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