噛んで、DESIRE
現実に頭を抱えたわたしを見て、吾妻くんは軽快に笑う。
「はは、ほんと。結構マジ」
「でも、……」
もちろん今まで、男の人を家にあげたことなんてない。
ためらうし、そう簡単にうなずけない。
ぐるぐると考え込んでいると、そんなわたしの様子を見て、吾妻くんは「へえ」と煙草の煙を吐いた。
「杏莉ちゃんは俺が野宿して辛い思いしても良いんだ?」
……ああ、これは勝てないかもしれない。
だってあまりにも、嘆いているお顔が美しすぎる。
揺らいでしまう心を汲み取るように、吾妻くんは微笑を浮かべた。
「野宿は、……心配です」
クラスメイトとして、それは見過ごせない。
助けてと言っている人を見捨てられない。
……う、どうしたらいいの。
まだ迷っているわたしに、吾妻くんはさらに追い打ちをかけてくる。