噛んで、DESIRE
吾妻くんはわたしの首筋に移動して、少しだけ歯を立てる。
まさに吸血鬼みたいに、血を吸うように。
彼が実は吸血鬼だと言われても、いまなら信じられる気がする。
でもそんなものよりきっと、吾妻くんはキケンだ。
「や、やめ……っ」
真っ赤になりながら、ふるふると首を横に振る。
こういうとき、どうしたらいいかわからない。
そんな経験ないってわかってる吾妻くんは、わたしを弄んで楽しいに違いない。
訴える思いでぎゅっと目をつぶれば、吾妻くんは軽快に笑って口を開いた。
「杏莉ちゃん、やめてほしい?」
「……っ、う、ん」
「そー? あ、じゃあ、良いこと思い付いた」
ぜったい良いことじゃない。
吾妻くんのことだから、きっと悪いことを思い付いたのだろう。