噛んで、DESIRE


でもこの熱から解放されるのなら、早く聞きたい。

自分の中での矛盾に混乱していると、吾妻くんはニコッと微笑んで言った。



「梓くんって呼んだらやめてあげてもいーよ?」



……そんなの、出来るはずない。

さぞ簡単だというふうに彼は提案するけれど、わたしにはハードルが高すぎる。


「そんなこと、でき、ません……」

「へえ。じゃあ、もっとやらしーことしようか」

「……うっ、だめです」

「はは、わがまますぎねえ? 杏莉ちゃん」


だって仕方ない。

吾妻くんが意地悪だから。


「あーあ、耳まで真っ赤」


言わなくてもいいのに、そんなこと。

吾妻くんのせいなのに、わざわざ指摘しないでほしい。


吾妻くん以外にこんなにドキドキしないのだから、ちょっとは優しくしてほしい。



< 212 / 320 >

この作品をシェア

pagetop