噛んで、DESIRE
「……あーマジ、杏莉ちゃんって何なの」
「……?」
彼の声は、不機嫌極まりない。
ぜんぜん怖くないのは、さきほどの彼の表情が脳裏に焼き付いて離れないから。
「……梓くん」
なんだか慣れてきてもう一度呼べば、また吾妻くんは黙ってしまう。
……照れてる?
彼らしくなくて、ちょっとだけ楽しくなる。
だけど数秒の沈黙のあと、はあーーーっと異常に長いため息をついて、彼はわたしのおでこに唇を押し付けた。
ドクンと鼓動が波打ち、わたしの中に生まれた余裕はまんまと剥がれ落ちる。
「調子乗ってんじゃねーよ、ばぁか」
目隠しされていた手が退けられ、そんな言葉とともに微笑んだ吾妻くんは。
息を飲むほど艶やかで美しかった。