噛んで、DESIRE
澪子と教室を出て、他クラスを見て回る。
こうして高校の文化祭を経験するのも、今年で最後だ。
そう思うと感慨深くて、寂しくて、隣にいる澪子と少しだけ距離を詰めた。
「あ、お化け屋敷だって。杏莉、入る?」
「ぜったい無理……!」
「ふふ、杏莉は昔からホラー苦手だよね〜」
吾妻くんともこの会話を繰り広げたなあ……と思い出す。
ちょっとギクシャクした校外学習。
あれから約1ヶ月が経ったのだと思うと、わたしたちの同居生活の期間もそれなりに長くなっていることに気付く。
だけど、そんな吾妻くんとの同居生活も、いつまで続くのだろう。
野良猫みたいな彼は、いつかふらっと消えてしまいそうで、ときどき怖い。
でもそれほど大切な存在になっていることを自覚したくなくて、自分の気持ちには蓋をしているのだ。