噛んで、DESIRE
……なんで離してくれないの?
混乱しつつも仕方なく大人しくしていると、吾妻くんが女の子に向かって首を傾げた。
「ん? 俺?」
「そ、そそうですっ! すごく美形だなあって思って、声かけなきゃ後悔するって思って……」
「あーそうなんだ?」
「はいっ! その……っ、あの、ラインとか! 聞いてもいいですか……?」
その女の子はすごく可愛らしくて、素直な言葉を吾妻くんにぶつけている。
……わたしもこのくらい素直なら、吾妻くんも意地悪してこないのかな。
そんなことを考えてしまって、慌てて思考を消し去る。
いまからでも逃げようとしたいのに、吾妻くんの長い腕が邪魔して上手くいかない。
……吾妻くんは何がしたいんだ、本当に。
目の前の女の子も、吾妻くんの腕が巻き付いているわたしを気にかけるように見てくるから、気まずくて仕方がない。