噛んで、DESIRE
ムッとして言い返せば、吾妻くんはわたしと対照的にニコッと綺麗に微笑んだ。
「俺さ、ハタチなんだよね」
「……はい、知ってます、けど」
吾妻くんが現在20歳なのは、何度も聞いたこと。
それなのに……、どうしていまのタイミングで確認するように言ったのだろう。
不思議に思って首を傾げると、吾妻くんは笑みを絶やさず、わたしの唇を指でなぞる。
思わず身体が強張ると、彼は困ったような表情をしてわたしを見下ろした。
「ここでキスしたら、俺、我慢のならねえ大人になる?」
鼻と鼻がぶつかるほどの近い距離で、彼はそう言って眉を下げた。
まだ乾ききっていない金色の髪が、わたしの頬を撫でる。
こんなに近いのに、どこか遠い。
距離を感じるのは寂しくて、辛い。