噛んで、DESIRE


「……歳は、ふたつしか、変わりませんよ」

「うーん、いまは3つだけどね?」


迷ったように微笑む姿は、吾妻くんらしくない。

こういうときに強引に来ないのは、彼が本当はとても優しくて繊細なことを表していた。


だからこそ、わたしは吾妻くんを手放したくない。



「そんなの、誤差です。吾妻くんだけが大人でも、わたしだけが子どもでもないんです」


“ 大人 ”なんて言葉で線引きして、置いていかないでほしい。

だって、吾妻くんはこの前言っていた。


───『ぜんぜん変わらねえよ。18歳だろうが、ハタチだろうが、関係ないじゃん』



余裕なんて、なくていいのに。

吾妻くんばかり大人の余裕を見せつけて、寂しくて仕方ない。



< 240 / 320 >

この作品をシェア

pagetop