噛んで、DESIRE
「言うようになったね」
クスッと笑って、吾妻くんはわたしの瞳を捕らえた。
当たり前のことだけど、いつ見ても彼は獣のような目を光らせている。
一度捕らわれると逸らせない、そんな瞳。
キケンな香りがするのに、逃げ出せない。
猛毒の正体は、やっぱり彼そのものだと思う。
「俺はさあ、杏莉ちゃんが泣くこととか傷付くことはぜったいしないって誓ってんのね」
「……そう、なんですか」
至近距離で見つめ合う。
こんな近い距離に美麗なお顔が存在しているのが、少しだけ恐ろしい。
それと同時に魅了されているのは、彼を泊めてしまった自分の甘さのせいだと思う。
でももっと魅了されたくて、わざと彼という罠に嵌っていく。
吾妻くんといると、不思議と孤独を感じない。
満たされているとは少し違うけれど、わたしはここにいていいんだと思わされる気がして、息が吸いやすくなる。