噛んで、DESIRE


ちゅっとおでこに軽くキスして、吾妻くんはわたしの横に倒れた。

考えるように天井を眺めている横顔は、相変わらず美しい。


その横顔を見て、ふと思う。

わたしは……吾妻くんに、自分のことをちゃんと話していない。

彼はわたしにきちんと話してくれたのに、フェアじゃない。


それに……吾妻くんに、聞いてほしかった。

慰めてほしいわけじゃなく、ただ何も言わずに抱きしめてほしかった。



……ちゃんと、話そう。

いつまでも逃げちゃだめだ。


覚悟を決めてじっと吾妻くんを見ると、彼はわたしの視線に気付いて目を瞬かせた。

そして言いたいことを悟ってくれたのか、極上に優しい笑みを向けてくれるのだから、やっぱりわたしは彼には勝てないと思った。






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