噛んで、DESIRE
「杏莉ちゃんって、男を簡単に家に上げちゃう無防備なコだと思ってたけど、いちおキケンだって自覚はあんのね?」
薄い唇が、にっと弧を描く。
その動作に思わず見惚れそうになるのを抑えながら、なんとか抗議する。
「簡単に、家に上げてないです……」
「そーなの?」
「吾妻くんが、……困ってたから、です」
「そーだね、俺困ってた」
鼻と鼻がくっ付きそうなくらいの近距離になり、思わず後ずさる。
だって、なんだか危険な予感がしたから。
何にもしないっていう吾妻くんの言葉が、信じられなくなったから。
「この状況、なんでもできるね?」
金色の前髪が目にかかっているのすら、美しすぎる。
吐いている言葉は、ぜんぜん美しくない。