噛んで、DESIRE
美味しそうなクッキーを眺めていると、澪子が苦笑して口を開いた。
「九条さん、杏莉が心配で仕方ないんだろうねえ」
「う……っ、やっぱりそうだよね」
「そりゃあそうよ。だって、突然吾妻が不登校になって、あんなに仲良かった杏莉も理由は知らないって言うし。それからずっと杏莉元気ないし、……それは三原もだけど」
三原くんのほうもちらりと見て、澪子はため息をついた。
「ねえ杏莉。本当に吾妻が学校に来なくなった理由知らないんだよね?」
困ったように眉を下げる澪子は、わたしを心配そうに見つめて尋ねてくる。
きっと彼女は、わたしが隠していると疑っているわけじゃなくて、元気がないことを気遣ってくれているのだろう。
澪子にまで気を遣わせて、本当に申し訳ないと思う。
でもそれ以上に寂しくて、心に穴が空いたみたいで、自分ではどうにも出来ない。