噛んで、DESIRE
「……うん、知らないよ。野良猫みたいなひとだから、なんだか納得いくような気もするけれど」
「わたしはぜんぜん納得出来ないよ……。あんなに杏莉にベッタリだったのに、突然何も言わずにいなくなるなんて」
「べ、ベッタリ……」
はたから見ればそうだったのか……と複雑に思いつつ、首を横に振った。
「まあ吾妻にも何か事情があるんだろうね」
ふう、と小さく息を吐いた澪子は、わたしのことだけでなく吾妻くんのことも心配しているのかもしれないと思った。
最初は毛嫌いしていたはずだけれど、彼を知っていくうちに、受け入れるようになったのかもしれない。
それはわたしからすればとても嬉しいことで、でもいまだに彼との関係を澪子に話していないことはずっとモヤモヤしていた。