噛んで、DESIRE
俯いていると、澪子は机に肘をついて、わたしに向けて優しく微笑んでくれる。
「きっと、吾妻が杏莉を変えてくれたんでしょう? 人前で自分の作品を飾るなんて、前までの杏莉ならありえなかったもん」
「……でも、最終は上手くいかなかったよ」
父に言われた言葉は、時間が経っても、いつまでも胸の奥に刺さって取れない。
小さな声で呟いたわたしに、澪子は真剣なトーンで言ってくれる。
「ううん、わたしは結果より過程が大事だと思う。自分を変えようって勇気を出した杏莉を見て、わたし、心底嬉しかったんだよ」
「……澪子、」
「ずっとわかってたの。杏莉と吾妻が、クラスメイト以上の関係なんだろうなって。でも、杏莉が自分から話したいと思うまで、何も言わないでおこうと決めていたの」