噛んで、DESIRE
「そう、かなあ……」
吾妻くんはわからない。
わたしが彼を好きでも、伝えても、何も変わらない気もする。
でも、そうだとしたら、……あの夜したキスは何だったのだろう。
たった数秒に満たない触れ合いの理由を探すには、まだ関係が曖昧すぎる。
「それに、ぜったいすぐに戻ってくるよ。吾妻が“ 永遠の高校生 ”だっていう迷信、本人もそろそろ終わりにしたいでしょ」
「うーん……。吾妻くんはわからないけれど、わたしはいっしょに卒業したいな……」
「……杏莉可愛すぎるよ。こんなに愛くるしい杏莉を置いて、あの野良猫はどこに行ったわけ……?」
頭を抱えている澪子に苦笑していると、いつのまにかわたしたちの近くにいた三原くんが激しく同意していることに気付く。