噛んで、DESIRE


吾妻くんがいなくなってから、すっかり暑くなって夏が始まっていた。

どこで何をしているのか見当もつかないけれど、夏の暑さにも負けずに元気にしていることを願う。


……きっといつか、吾妻くんは帰ってくる。

だって文化祭の日の夜、わたしを離さないというふうに、強く抱きしめて眠ってくれたから。



「担任も何か知ってそうだから吾妻はどうしてるのかって聞いたんだけど、ぜんぜん教えてくんなかったんだよなあ……」

「でも学校辞めたわけじゃないんでしょう? それなら、そのうちふらっと帰ってくるよ」


「……八島って冷めてるように見えて、案外吾妻のこと心配してるよな。そういうとこ良いと思うよ、俺」

「な……なに真面目なこと言ってんの。別に、吾妻が帰ってきたら杏莉が元気になるからわたしも嬉しいってことだし!」


「そうだよな? 皆んなハッピーじゃん! 吾妻ぁ、早く戻ってこいよ〜!」



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