噛んで、DESIRE
「そうか。しばらく会っていなかったから、元気そうで安心したよ」
「はい、とても……元気にしてました」
微笑みを絶やさない仁科さんを見上げると、やっぱり吾妻くんと似ていると思う。
吾妻くんが歳を重ねたらこんなふうになるんだろうなあ……と想像していると、仁科さんは何かを思い出したように口を開いた。
「そういえば数ヶ月前、僕が出張に行っていたとき、梓が杏莉ちゃんの家に転がり込んでいたと聞いたけれど」
「あ……っ、はい。なぜか成り行きでそうなってしまいまして……」
「はは、きっと梓が杏莉ちゃんを上手く言いくるめたんだろうな。想像つくよ」
「あはは……」
それにしても、吾妻くんがわたしの家にいたことを仁科さんに話していたことが意外だった。