噛んで、DESIRE
そう思ったのは吾妻くんの叔父さんである仁科さんも同じようで、優しさの滲み出る瞳をわたしに向けて口を開いた。
「梓が誰かのことを僕に話してくれたのは初めてだったから驚いたよ。それに杏莉ちゃんの家にいるなんてね」
「わたしも……仁科さんが吾妻くんの叔父さんだということに驚きました」
思わずそう口を挟むと、仁科さんは可笑しそうに眉を下げた。
その仕草が吾妻くんと類似していて、またもや寂しくなってしまうのを隠すのに必死だ。
「はは、お互い様だな。……でも僕の家に転がり込んできたときからずっと申し訳なさそうにしていたのが気掛かりだったから、やっと居場所を見つけたんだと安心したんだ」
確かに、吾妻くんは仁科さんに申し訳ないと言っていた。
叔父さんだからといって甘えられないのは、きっと吾妻くんが優しい人だから。
迷惑なんじゃないかと考えれば考えるほど、苦しくなって、夜に街を出歩くようになったのだと思った。