噛んで、DESIRE
「大丈夫。梓は一度決めたことはやり遂げる奴だから、心配することないよ」
「……意味深で気になってしまいますよ、仁科さん」
「はは、梓も罪な男だな」
笑い方まで、吾妻くんにそっくりだ。
会いたいな……と胸が苦しくなりながら、去って行く仁科さんに頭を下げた。
家の鍵を開けて中に入ると、もちろん誰もいない。
ひとりぶんのご飯を作り、温もりのないベッドで眠りにつく。
……夜ってこんなに長かったっけ。
『心配することないよ』
仁科さんが言うなら、そうなのだろう。
だけど、やっぱり不安や心配がよぎって、寝られなくなる。
ベッドの上でひとり悶々と考えていると、スマホが通知を知らせる音を鳴らした。