噛んで、DESIRE


今日までずっと、父に何を言われるのかが気がかりで夏休みどころではなかった。

いちおう、父から連絡が来たことは澪子にだけは伝えた。


彼女はかなり今日のことを心配していたようだったけれど、わたしがちゃんと父と向き合ってくると言えば安心したようにうなずいてくれた。


『もし泣かされたらわたしがすっ飛んで行くからね』


そんな言葉を掛けてくれる澪子は、かけがえのない親友。

彼女が心の中にいると思うだけで、勇気も元気も百倍になるのだから凄い。


……だから、わたしは父に怯えている場合ではないんだ。


もう一度腹を括り、少し距離の遠い父を見上げる。

着物が良く似合う凛々しい眉は、いっさい動かない。


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