噛んで、DESIRE



調子の良いことばかり言う。

そしてわたしは、彼に乗せられている。


吾妻くんの思うように、きっとわたしは動かされているんだ。


そう思えば、急に胸の奥がモヤモヤしてくるのだから仕方ない。


「お、杏莉ちゃんどこ行くの」

「洗面所です!」


「そ、じゃ俺も着いてく」

「つ、着いて来ないでください……!」


「え、なんで。手洗いたいんだけど」

「…………、どうぞ」


異常に警戒しているわたしに、吾妻くんは不審な顔をして洗面所に入っていく。

……警戒しすぎだな、わたし。


反省して、タオルを吾妻くんに渡す。

すると、彼は差し出されたタオルを見つめて笑った。


「新婚かよ」

「…………ちがい、ます」


「はは、純情だね。杏莉ちゃん」


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