噛んで、DESIRE
「まさかそんなことあるはずないと思いますが……もし杏莉さんの意見を無視するようなことをされた場合は……、わかっていますよね? 四宮さん」
ニコッと微笑んだ吾妻くんは、わたしがいままで見てきた中でいちばん恐ろしかった。
父が慌てたようにうなずくところを横目で見て、わたしは同時に救われた。
こんなにもわたしのことをがんじがらめに縛っていた父から、救ってくれるひとなどいないと思っていたのに。
……吾妻くんは、わたしにとってヒーローだ。
もちろんただのヒーローじゃない。
少しだけキケンな匂いがする、ダークヒーローだった。
「……もちろんだ、梓くん」
「それなら安心しました。では、今日はそろそろお暇致します」
「ああ。吾妻によろしく言っておいてくれ」
「わかりました、父に伝えておきます。では、杏莉さん。また後日伺いますね」