噛んで、DESIRE
好き、恋、愛
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着物から私服に着替え、身軽になり、実家を出た。
家を出るとき、父はわたしに背を向けていた。
視界の端で、純恋がわたしを不安そうに見ていたのは知っていた。
……やっと、自由になったんだなあ。
少し寂しさを覚えながら外の道を歩いていると、家から飛び出してきた純恋に呼び止められる。
「お姉ちゃん……!」
息を切らして駆け寄ってきた純恋は、泣きそうな表情を浮かべていた。
まだ中学生なのに、純恋は抱えているものが大きすぎる。
父は娘を道具としか思っていないんだろうなと呆れつつ、なるべく優しいトーンを心がけて返答する。
「どうしたの? 勝手にお家出たら、お父様に叱られるよ」
すると、純恋はわたしの腕を柔く掴んで、うつむき加減に言った。