噛んで、DESIRE
「結構有名だよ? 吾妻くんの噂」
「そうなの?」
その本人がわたしの隣にいるのに気遣って、澪子は小さな声で教えてくれる。
正直あまり興味がなかったけれど、せっかくだから彼女の話に耳を傾ける。
すると澪子はわたしが興味を示したと思ったのか、少し嬉しそうに口を開いた。
「例えばね、夜は綺麗な女の人を連れて遊んでるとか、よく喧嘩してるとか、そういうの」
「け、喧嘩……」
まさかそんなパワーワードが飛び出してくるとは思わなくて、目を瞬かせる。
でも、妙に納得してしまうくらい彼はキケンな雰囲気を纏っているのだから、あながち否定できない。
「まあ、留年2回目の永遠の高校3年生って言われてるだけあって、かなりの不良らしいの。だから、杏莉も気を付けなよ」