噛んで、DESIRE
「……実家が、家元なので」
「家元?」
「華道の、家元です」
「え、それはまたすげえのな」
あんまり言いたくなかったけれど、ここまで家にお花が多いと、ただの花好きにしては不自然だろうと思ったのだ。
吾妻くんなら深読みせず、流してくれるだろうとも感じていた。
案の定、彼はそれ以上家のことに追及することなく、平然と話しかけてくる。
「俺、華道習ってたことある。まあ、センスないし無理矢理習わされてたから、嫌すぎてすぐ辞めたけど」
「吾妻くんなら、適当に生けても良い作品できそうなのに……」
「テキトーって。杏莉ちゃん結構言うのな」
けらけら笑って、吾妻くんは窓際に飾ってあるマーガレットに手を伸ばした。