噛んで、DESIRE
「……もちろんですよ」
ああ、狡すぎる。
どこまでも、わたしは彼に勝てない。
彼と見つめ合いながら、まだまだ疑問が解消できないわたしは尋ねる。
「……この2ヶ月間は、何をしていたんですか?」
ずっとずっと、待っていたのに。
寂しくて、夜が辛かったのに。
そういう想いを込めて呟けば、吾妻くんは思い返すような表情を浮かべながら話してくれた。
「実家に帰って、きちんと父親と話してきたんだ。逃げてばっかりじゃ駄目だと思ってたし、帰る理由が出来たから」
「……帰る、理由?」
思わず口を挟むと、彼は優しい獣目で見つめ、ゆっくりと髪を撫でてくれる。
「吾妻を継いで、杏莉ちゃんの居場所を作るため。そのためなら、俺マジでなんだって出来ると思ったわけよ」