噛んで、DESIRE
吾妻くんの“ 好き ”は破壊力がとんでもない。
わたしに向けて放たれている言葉だと信じるのが難しい。
「杏莉ちゃんは? 俺のこと好き?」
甘い声が、わたしを揺さぶる。
たぶん、わたしにだけ魅せる顔。
「……好きじゃ、足りません」
こんなの、バカップルみたいだ。
そもそも、まだ付き合ってもないのに甘すぎる。
でも吾妻くんが嬉しそうに笑っているから、それだけでなんでもいいと思ってしまう。
「ふは、すげえ幸せ」
「わたしも、です」
「じゃあ杏莉ちゃんさ、俺のカノジョになってくれる?」
優しいトーンで紡がれた言葉にドキッとする。
吾妻くんが彼氏なんて、数ヶ月前なら信じられないのに、現実になってしまっている。
……もう、幸せすぎてどうにかなりそう。
吾妻くんは、わたしを見つめて美しい微笑を浮かべている。
「……なりたい、です」