噛んで、DESIRE



「ひとまず……ソファにでも座っていてください」


夜ごはんの支度をしようと、キッチンに立って冷蔵庫を開く。

座ってくださいと言ったはずなのに、吾妻くんは興味津々というように、マリーゴールドを愛でながらわたしをじーっと見ている。


「杏莉ちゃんって、料理するんだ」

「……わたしだって、少しぐらい出来ますよ」


「なんか、いいね。出来る女じゃん、杏莉ちゃん」

「……う、褒めてるんですか、それは」



言葉のすべてが軽い。

吾妻くんが言うと、本気か冗談かわからない。


呆れながらも、宙に浮いているような口調を咎めることはせず、手早く料理を進めていく。



「…………座らないんです、か」


さっきからずっと視線を感じていて、さすがに我慢ならない。

思わず声を掛けると、吾妻くんはにこっと微笑んで言った。





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