噛んで、DESIRE



「俺、さっき地べた座ってたんだよね」


そうだった。

紫煙燻らせて地面に座り込んでいた。


さっきは状況を飲み込むのに必死で、そんなこと言われるまで気づかなかった。


……そういうこと、気にしてくれるんだ。

吾妻くんは、案外気遣いがある人なのかもしれない。


少し意外に思いながら、吾妻くんに言う。



「……う、もう大丈夫ですから座ってください。ずっと見られるより良いです」

「え、こんないかにも高級で綺麗なソファに座れと? さすがの俺でも申し訳ない」


「〜〜っじゃあ、シャワー浴びてきてください! あと、服は貸しますから」

「はは、さすがに俺、杏莉ちゃんの服は入らないんだけど?」


「……っわたしのじゃなくて、父のです! もともとここは、父の持ち家なので!」

「いやーそっかそっか。ごめんね杏莉ちゃん。からかいすぎた」





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