噛んで、DESIRE


「……食べましょ、う」

「ん、食べる。お腹空いた」


見た目は艶やかで大人っぽいのに、発言が少し子どもっぽくてミスマッチだ。

でもそんなところにもドキドキしてしまうわたしは、何か大切なものが落っこちたのかもしれない。


「……ん?」


いっさい彼を視界に入れずにテーブルに座ろうとすると、吾妻くんは不思議そうにそう呟いた。

それでも敢えて目線を彼に向けずにいると、突然彼の美麗なお顔が目の前に現れた。


驚きすぎて、呼吸が止まる。


「あのさ、なんで目合わせねーの?」


猫目こと獣目に捕われて、ドクッと心臓が跳ね上がる。

少し低い声が、彼がもう“ 大人 ”だということを象徴していて、苦しくなる。




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