噛んで、DESIRE



「気のせい、です」


ふいっとまた、目を逸らす。

だってこんな心、知られたくないから。


強引な吾妻くんは、首を傾げて尋ねてくる。


「そう?」

「そう、です」

「ふーん?」



どうにも痛いくらい視線を感じるけれど、無視して手を合わせる。


「いただきます」

「じゃ俺も、いただきます」


同じように手を合わせた吾妻くんを、ちらりと垣間見る。

……美味しいかな。


吾妻くんの口に合うかわからなくて緊張していると、ひとくち食べた彼は、すぐにわたしの顔を見上げて言った。


「杏莉ちゃん、天才?」

「美味しい、ですか?」


「すげえ美味しい。一家に一台、杏莉ちゃんほしい」

「わたしはロボットじゃないですよ……」


「わかってる。でも結構感激してる」

< 37 / 320 >

この作品をシェア

pagetop