噛んで、DESIRE
「気のせい、です」
ふいっとまた、目を逸らす。
だってこんな心、知られたくないから。
強引な吾妻くんは、首を傾げて尋ねてくる。
「そう?」
「そう、です」
「ふーん?」
どうにも痛いくらい視線を感じるけれど、無視して手を合わせる。
「いただきます」
「じゃ俺も、いただきます」
同じように手を合わせた吾妻くんを、ちらりと垣間見る。
……美味しいかな。
吾妻くんの口に合うかわからなくて緊張していると、ひとくち食べた彼は、すぐにわたしの顔を見上げて言った。
「杏莉ちゃん、天才?」
「美味しい、ですか?」
「すげえ美味しい。一家に一台、杏莉ちゃんほしい」
「わたしはロボットじゃないですよ……」
「わかってる。でも結構感激してる」