噛んで、DESIRE


そのままパクパクと嬉しそうに食べてくれる吾妻くん。

学校で見ていたときは、ずっとキケンな雰囲気を纏っていて、近寄りがたいと思っていた。

でも本当は、そうじゃないのかもしれない。


こんなに普通に食卓を囲んでいるのが不思議なはずなのに、なぜかしっくりきてしまうのだから。

彼がわたしのことを見ていないのを良いことに、じっと金色の髪を眺める。


すると視線に気づいたのか顔を上げた吾妻くんと、バチッと目が合った。


「なに?」


首を傾げる吾妻くん。

視線を逸らそうとするも、彼はそれを許してくれない。

今度こそ、なんでもないは使えないな……と断念し、小さな声で言った。


「……髪が、濡れてるから、気になっただけです」

「ああ、乾かすの面倒だった」


「髪、少し長いですもんね」

「そ、すげえ目にかかる」





< 38 / 320 >

この作品をシェア

pagetop