噛んで、DESIRE



吾妻くんが前代未聞の留年2回目だと言うことは、周知の事実だ。

つまりわたしたちより、ふたつ歳上。


本人の口からは聞いてないから本気で信じてはないけれど、同い年だとは思えない色気を寝ているだけでも放っているのだから一概にちがうとは言えない。


……それにしても、よく寝るなあ。


新学期になって約1ヶ月が経ったけれど、彼は学校にめったに来ない上に、授業も寝てばかり。

ふらっと現れて、いつのまにか帰ってる。


このままだと留年3回目になってしまうのではないかと、ちょっとだけ心配している。

そんな吾妻くんが本当はどんな人なのか、わたしだけでなく、クラスみんなが知らないと思う。


「気を付けるもなにも、関わりないもん」

「そうだけどね、杏莉。人生なにが起こるかわからないんだから、警戒するに越したことないよ」


「澪子ってば、過保護だよ……」

「わたしは杏莉が心配なの!」



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